第2回は、移動コーヒースタンド「SUNNY SITE COFFEE」を営む、池台エイシンさんにインタビューをさせていただきました。営業時間中、お客さんがいなくなったタイミングでインタビューをさせていただきましたが、お客さんの列はなかなか絶えず。「SUNNY SITE COFFEE」がいかに多くの人々から愛されているかがわかりました。今回のインタビューでは、移動コーヒースタンドを立ち上げた背景や仕事のやりがいなど、さまざまなお話を聞くことができました。
―――さっそく、質問をさせていただきたいと思います。まず、池田さんの生まれてからこれまでの歩みをお聞かせ下さい。
池田さん: 僕は宮城県の丸森町で生まれました。高校を卒業するまで丸森にいて、そのあと秋田の大学に進学して、仙台に仕事で帰ってきたんですけど、最初はサラリーマンだったんです。
今と全然違って、デザイン関係の仕事をしてて、10年ぐらい会社に勤めた後、独立してデザイン会社を作ったんですね。クライアントが東京に多かったんで、デザイン送って構成してもらってネットで返してもらって、みたいな仕事だったんですけど、昼間見てもらって夜修正する感じなルーティーンができて、どうしても夜の作業が多めになってきたんですよ。
それで、昼間時間が空いてしまって、なんかしようって思ったときに、移動販売を思いついたんです。移動販売って形態だったら、パソコン一つあると、デザインの仕事ができたので(笑)。うちのデザイナーたちもみんな家で作業してもらうようにして。今となってはリモートとかって言うようになったんですけど、それが多分10年ぐらい前のお話で、当時そういうところあんまりいなくて。会社の住所だけはあって職場はない。各々家でやって、ネットでやりとりをしてネットで東京に送ってみたいな感じでやってたんです。昼間はそういう感じで移動販売しながらデザインの仕事をやって今に至るみたいな感じですかね。
―――今もデザインの方はやられてるんですか?
池田さん: 今は紙のデザインはやってないんだけど、ウェブの方ではちょっとだけやったりしてます。今もう新規でとったりしてなくて更新とかを中心にしています。まあ、メインはこっち(移動販売)ですね。
―――なるほど、そうなんですね、すごい。10年ぐらい前から今急いでみんながやってるようなリモートをもう既にやってたってことなんですね。
池田さん: まあ結果的にそうなると思うんです。その時は、リモートがいいとか、リモートがダメとかっていうそういう概念でやってたわけじゃなくて、昼間例えば、一か所に集まるとすると何もしないのに家賃だけ発生してるってのがすごい無駄だったんですよね。だとしたら一番大きい、家賃とかそういう定期的に支払う分を省きたいっていう。みんなデザインやってる人だから家にも仕事のできる環境を持ってたんですよ。それで、リモートでやれるんじゃないかって話をして。ただ法人なんで住所が必要で、知り合いの所に間借りさせてもらって、住所だけ貸してもらってました。でも、実際はそこには行かずにみんなバラバラでやってましたね。
―――じゃあ移動型にされたのも、特定の居場所を持たないことになにか意味があったんですか?
池田さん: そうですそうです!店舗を持つことによってまた固定のお金がかかっちゃうと、あんまり意味がない。事務所も間借りしているのに、コーヒー屋で固定費が出ちゃうとあんまり意味がないのでどうせだったらどこにでも移動できるっていう環境にしたいなって。
―――移動型にしたことでよかったことと逆に大変だったことってありますか?
池田さん: いや、大変っていうのはあまりないかな。移動型にすると人を待つんじゃなく、人がいるところに行く感じになっているので、移動型っていうのは結構メリットは多いと思う。ただ、デメリットとしてはやっぱり普通の固定店舗より下に見られるっていうのがある。「移動、ね、うん移動販売ね……」みたいな感じでずっと見られるので……いまだに見られますので……(泣)。どうしても固定店舗の方が信頼レベルが高くて、やっぱりそういう所を今後打破していきたいなって感じはしてます。
―――出店場所っていうのはどういう風に決められているんですか?
池田さん: うちを立ち上げた時は出店場所っていうのがなくて、会社のホームページのお問い合わせの欄とかありますよね、そこにかたっぱしからメールしたんです。「出店させてくれないか」っていう。そうするとその中の10%とか20%ぐらいは返事が返ってくる。残り80%くらいはやっぱり返事が返ってこないんですけど、返ってきたところにもう一回詳しく話してみると、まあ、結果ダメでしたとかいいですよってところがあって、そんな感じでメールすると大体2-3社ぐらいは出店にこぎつけられるっていう感じでした。一つ、こだわりがあって、どうしてもスーパーとかの移動販売っていう風にしたくなくて、できればあんまり出てないところに出したい、ってところもあったんです。そこからだんだん知ってもらってというか、それで今はもうほとんどうちから出店させてっていうのはあんまりないです。
―――お昼の時間を使えるようにっていうことで始められたっていうお話だったと思うんですけど、どうして「移動型」「コーヒー」スタンドになったんですか?
池田さん: 移動というかこの空間が欲しかった。移動ってのはあんまりこだわりではなかったんですけど、変な話コーヒーってのが後付けなんですよ。移動でやるなら何ができるのかなって考えた時にコーヒーだった、で、コーヒーにしたって感じです。
―――元からコーヒーがお好きだったんですか?
池田さん: もとからコーヒーを飲む家庭に育ったので、ちっちゃいころから飲んでいたんです。それで、ちょうど、お店を始めだした時にサードウェーブとかっていうコーヒーがアメリカで流行り出してきたときで、それはまだあんまり日本には入ってきてなかった。でも僕自身そういうのに興味があって、結構東京とかに飲みに行ったりとかしてて。仙台には今ほどコーヒー屋さんっていのが全然無くて、だからこそ移動型コーヒー販売をやったら面白いんじゃないかって思ったんです。
―――やりがいはありますか?
池田さん: たったこれだけのスペースで自分の好きなようにできる。この場所でコーヒー屋やったら面白いんじゃないかなとかっていうアイデアが常にあって、山の中でやったときもありますし、ほんとに何もない田んぼの中で開店したっていうのもあります。そういう時ってお客さんに来てもらいたいとかではなくて、自分が楽しみたいからっていう感じなんです。そこが面白みになっています。
―――SNSやnoteを拝見させていただいたんですけど、どうしてフェアトレード商品を扱っているんですか?
池田: コーヒーっていうのは結構前からフェアトレードって言ってきた業界だと思うんですけど、そういうのもあって話は入ってきやすい状況だったんですね。だから、やれる分はやっていこうと、まあでも無理はしないつもりでいて。やってるって言ってもそれを前面に出したくはなくて、軽くやってる感じです。
―――なるほど、商品にこだわってることとか、譲れないことってありますか?
池田: 譲れないものはないんですけど、ただうちは見ての通りほんとに小さいお店なので、ちっちゃいなりに豆の種類を変えてるんです。今日はメキシコの豆を出してるけど、2週間くらいで豆の種類を変えていて、次来た時に違う豆になってる、みたいな。そういうので新しさを出していってます。まああとはさっき言ったみたいに移動型っていう特殊性を生かしたやり方をできればいいなって思ってます。
―――失礼な質問になってしまうかもしれないんですが、移動型コーヒースタンドをやられてて、どれくらいの収入というか、年収というか……たとえでもいいんですけど、どれくらい稼げるのかなって(笑)。
池田さん: えーっと(笑)。それこそお店によって、やり方によって違うと思うんですけど、今のうちのやり方でだと、普通のサラリーマンよりはもうちょっと貰ってるんじゃないかな。
―――それはすごいです! 話が変わるんですけど、お休みの日とかって何をされてるんですか。
池田さん: 今まるまる1日休みっていうのがほとんどなくて。半日休みとかってなったときは……何してるんだろう、何もしてない……家に居ます(笑)。
あ、でも、釣りとか結構好きですね。以前はよく行ってました。今はちょっとまとまった時間もなくて行けていないです。まあ、出店の帰りに釣りに行ったりしてます。場所によって違う魚が釣れるんです。あ、あとキャンプして帰ってくるとかもありました。
―――この仕事ならではのできることですね。
―――最後の質問になるんですけれども、私たち学生や新社会人に向けてメディアをやっているので、これから職業とかを決めていく学生や新社会人に向けて、何か一言いただきたいです。
池田さん: もう多分、僕らが就職、就活とかした頃と時代が変わってきてて、今はほんとに大変というか、大変なんだけど選択肢というのは僕らの頃より多いと思うんですよ。だから、自分の意志というのを持って進んでもらえればなって思う。なんかバブルの時って「いいなぁ、いいなぁ」って思われがちだけど結構完全にレールを敷かれているところに乗っかっているみたいなところがあったんで、だから選択肢ってあんまり、あるようでなかったんです。その点、今は大変なんだけど、やりがいという意味では、もしかしたら今の方がやりがいを見つけられると思うので、その辺を大事にして、頑張ってやっていってほしいなと思います。
―――ありがとうございます。ちょうど今大学三年生で、就活をやっていて、自分の将来に悩んでいたので、色々な選択肢があるんだっていうことをもう一度胸に留めて頑張っていこうと思います。
池田さん: ぜひ! 頑張ってください!
2021.5.5
Interviewer:佐々木有彩、別處史明
Writer:佐々木有彩、山本想良
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